ご確認ください

キヤノンメディカルシステムズウェブサイト(www.medical.canon)は、
薬事法対象商品の情報を医療従事者向けにお届けするためのコンテンツを含んでおります。
お客様がアクセスされたページは医療従事者向けの情報を掲載しているため、
閲覧は医療従事者限定とさせていただきます。

あなたは医療従事者(医師、診療放射線技師など)ですか?

はいいいえ

◎「いいえ」の場合は、キヤノンメディカルシステムズWebサイト内「一般のお客様へ」ページへリンクします。

超音波診断情報
US Magazine vol.04

Vol.4 | 特集

対談 早期の膵臓癌を見つけるために超音波ができること

膵臓癌をターゲットにした超音波検診の普及と超音波検査技師の教育・育成に努める岡庭信司先生と、病診連携で膵臓癌の早期発見に取り組み、めざましい成果を上げている「尾道方式」の花田敬士先生。お二人に膵臓医療の現状と、超音波診断装置が果たす役割についてお伺いしました。

photo

膵エコーの高い技術(岡庭先生)と医療システムの確立(花田先生)。互いに尊敬し合う様子が印象的

打率四分五厘。でも無駄な空振りはない。

花田
膵臓癌のリスク因子が多い人に地域の診療所で腹部エコー検査を行い、わずかでも疑わしい場合には我々の尾道総合病院に来ていただいて、EUSなどの検査で膵臓癌の早期発見を目指すのがいわゆる「尾道方式」と呼ばれる体制です。エコーを最初のきっかけにして病診連携(中核病院と診療所の連携)に取り組んでみて、どのくらいの成績が出るかを測ってみたのですが、ある程度目処がつくまで10年かかりました。そのデータを見てみると、意味がなくはなかったな、と思います。ボクらの打率は野球に例えると四分五厘です。1万2260打数555安打。裏を返せば九割五分の方は空振りです。ホームランが四分五厘しか出ないやり方を是とするか否とするかは、我々ではなく皆さんが判断することでしょう。ただ、空振りのように見える九割五分の中にたくさんのフォローアップ例が出ていて、そこから早期膵癌も見つかっていることを加味すると、決して無駄な空振りではなかったなというのが実感です。
岡庭
尾道の開業医の先生方は超音波診断装置を持っていらっしゃるのですか?
花田
装置を持っている人は多いのですが、膵エコーまでやられているかといえば疑問です。日常診療の延長と考えると一人にかけられる時間はおのずと決まってきますから。ただ、自身がもともと消化器内科医で、大阪とか東京など首都圏で研鑽を積まれた方は、いい装置を持って帰ってきて、通常診療とは別に時間を設けて取り組む先生もいらっしゃいます。ただ、多くの先生はそうではない。標準化については道半ばという感じですね。
岡庭
通常のスクリーニングに飲水法などを加えても15分くらいでできることが多いと思いますが...。
花田
エコーで15分というと、診察全体ではもっと時間がかかりますよね。診療所では膵癌の検診だけを行っているわけではないので、なかなかそこまで時間を割くことはできないというのが実状でしょう。
岡庭
確かにそうですね。
花田
多くの場合、お腹の触診の流れでプローブを持ってきて、腹部エコーをやる。そのくらいの時間しか取れないのです。
岡庭
膵臓だけなら5分くらいで診られるかもしれませんね。
花田
そうですね。危険因子が多い患者さんの場合には、膵管拡張だけは診てくださいとお願いしています。
岡庭
それは私の地元でも同じですね。多忙な開業医の先生方に検査をお願い出来るのは5分が限界かもしれません。
花田
エコーに熱意のある先生だと、ちょっと嚢胞が見えたりすると膵臓全体を診ようと時間を掛けてくれたりします。
岡庭
逆に、中途半端にやるくらいなら、やらない方がいいというご意見をお持ちの先生もいらっしゃいますし、超音波に携わる技師さんの中でも温度差はありますね。
photo

(左)尾道総合病院診療部長 内視鏡センター長 花田 敬士先生
(右)飯田市立病院診療技幹 消化器内科部長 岡庭 信司先生

医師がエコーを操作するメリット

花田
尾道総合病院では、診療のエコーは大半をドクターが行っています。3年次で来た先生には指導医を付けて二人でやってもらっています。というのも、その後EUSをするときにUSの経験も知識もないのではいけません。僕はEが付く前にきちんとUSの経験を積んでもらっています。だから最低1年間はみっちりエコーを学んでもらいます。
岡庭
その方が開業医の先生からの要望にも応えられるということですね。
花田
開業医さんがエコーの画像を紹介状につけてうちの病院に来るのですが、エコーを知らないと、その画像がどこを捉えたものかもわからない。そういう意味では、うちは技師さんに任せていますという病院がたくさんあるけど、いかがなものかと思います。
岡庭
飯田市立病院では日常超音波検査を行っているのは私だけです。そのため、後期研修にきた先生方には必ず超音波研修会に出席してもらい、ある程度超音波を勉強してから大学に戻ってもらいます。医師は自己流で始めている方が多いため、残念ながら認定超音波検査技師さんの方が描出スキルは高いことが多いのです。
花田
数は圧倒的に技師さんの方がこなしてますからね。医師がエコーをとるというのは、私の教育上のこだわりですね。年間医師一人あたり2000くらいは診てもらうので、そこからEUSに進むと画像を把握する力が付くのです。体外式超音波検査で診た画がEUSだともっと精密に撮れるということを実感してもらえます。そこから始めてもらっています。
岡庭
残念ながら、最近の画像診断は最初に行うべき超音波を省略する傾向にありますね。
花田
そうですね。まずCT、EUS、MRIという順で、USがない。
岡庭
時にはEUSさえ行っていないケースもありますね。

電波に載って世界から注目される「尾道方式」

岡庭
先生の提唱しておられる尾道方式は日本各地で広がりをみせてますね。
花田
今17都市くらいで取り組みが進んでいるようです。成否のポイントは中核施設の医師より地区の医師会長さんです。医師会の理解が得られないことには取り組みは立ちゆきません。私は各地で「尾道方式」について講演をさせていただく機会が増えているのですが、当初大学病院から依頼されることが多かったのが、最近は医師会の学術講演に呼ばれることが増えています。そこで医師会長や副会長が熱心に質問されることがあって、そういうところは火がついています。火がついているところは飛躍的に結果が出てますからね。これは当たり前の話で、危険因子を持った人はいくらでもいます。そういう人に危険の少ないモダリティで検査をしてもらう。極論すれば、それはEUSでもMRCPでもいいのですが、全国どこにでもあるのはやはりエコーですから、エコーが入り口としては正しいのかな、と考えています。そんな話を続けていたら、日本全国、訪ねていない県がなくなってしまいました。
岡庭
それはスゴイですね。とはいえ、残念ながら、超音波に関心のない先生も案外多いのではないですか?
花田
そうですね。医師会の方が、僕はエコーも膵臓も専門外だから、なんていうことになると、「いい話だったけどうちでは無理だね」、という反応になることがあります。
岡庭
私は検査技師さんに膵臓を描出する手技や所見を拾い上げる意義を教えることが膵癌発見に貢献できると考えて、技師さんを対象とした講演やライブセミナーを行っています。そういえば花田先生が某テレビ番組に出演されてから、膵臓の超音波検査に関する問い合わせがものすごく増えましたよ。
花田
番組をご覧になった患者さん側の意識が変わったのだと思います。

高精細なモニターが重要

岡庭
ハイエンドの超音波診断装置はそれぞれの地域の基幹病院にあれば良いと思います。診療所はハイエンドの診断装置でなくても高精細なモニターが装備されていれば良いと思います。そうすれば画像の評価もしやすくなり、検査時間も多少短縮できます。あとは、エコーにもっと親しんでもらう働きかけを行うことでしょうか。何でもかんでもすぐ単純CTという風潮はどうかなと思います。但し、超音波検査のデメリットとして観察範囲が狭いこと、診断能が検査者の技量に左右されることなどが、膵臓診療ガイドライン2019でも挙げられています。
花田
同じモダリティで変化をみて、わずかな変化をつかまえて違うモダリティで確認するというのが一番コストがかからないですし、確実ですね。
岡庭
膵癌の診断においてはまずCTという風潮がありますが、超音波検査がもっている有効性や可能性をアピールしてもっと活用されるようにしたいですね。
花田
同感です。 今日はありがとうございました。
STUDY 9 膵臓癌の早期発見に必要な超音波診断装置
webinar

膵臓癌の早期発見に必要な
超音波診断装置

膵臓癌が早期発見困難な理由として、早期には自覚症状がなく進行癌になってから自覚症状を認めることや、膵臓の周囲には胃や十二指腸といった消化管が存在するため超音波検査での描出が困難なことが挙げられます。
飯田市立病院の岡庭信司先生は、超音波による膵胆道領域のスクリーニングを普及させるため、講演に加えてハンズオンやライブデモンストレーションに精力的に取り組んでおられます。

readmore もっと見る
STUDY 10 『尾道方式』その可能性
webinar

『尾道方式』その可能性

膵臓癌をターゲットにした超音波検診の普及と超音波検査技師の教育・育成に努める岡庭信司先生と、病診連携で膵臓癌の早期発見に取り組み、めざましい成果を上げている「尾道方式」の花田敬士先生。
お二人に膵臓医療の現状と、超音波診断装置が果たす役割についてお伺いしました。

readmore もっと見る