Product Story
製品開発エピソード

デザインするうえで大切にしていること

キヤノンの医療機器デザインは患者さんと医療従事者2つの視点が大切であると考えています。 患者さんにとって不快や不安を感じさせないこと、視覚的に威圧感がないこと、身体に触れる部分は特に柔らかい印象となるよう配慮しています。 更に、医療従事者の使用時負担をできるだけ減らし、快適に使えるエルゴノミクスデザインになっていることが大切です。 これらを満たしたうえで、その製品がキヤノンブランドであることが感じられるような統一性を持たせています。

ハンズオンセミナーに参加

開発の初期には医療機関が催す超音波診断のハンズオンセミナーに参加して、実際にプローブを人の身体に当てて操作する経験をしました。 現場では想定以上にゲルの使用頻度が高いことから、Aplio flex & Aplio goではゲルホルダーはプローブホルダーと同列で、位置も簡単に動かせるようにしました。 また、操作するときの動かし方や力加減から得た知見をプローブのデザインに生かしています。 これは机上だけではデザインできないなと実感した部分ですね。

配色の狙い

メディカル機器の本分は見た目のスタイリッシュさではなく、それによっていい診断が下せるかどうかです。 超音波診断装置の場合はきちんとした画像が撮れるかどうかが大切なので、検査を行う医師や技師にストレスを感じさせないことを第一に考えています。 そこでAplio flex & Aplio goではモニターや操作パネルにオニキスブラック、 脚などのベースにロジウムシルバー、柔らかさを表すプローブやホルダにアンゴラグレイ、 本体を収める筐体にファインホワイトを配しました。 操作パネルにブラックを用いたのは、暗部が多い超音波の診断画像と視線を行き来させる際に、なるべくハレーションを起こさないことを考えました。 また、操作パネルなどに印字されるフォントは極力シンプルにしながら、数字の6と8、英字のCと数字の0など誤読しがちな字も識別しやすい形にしました。

ストレス排除の工夫

操作パネルはブラックにして視覚的なストレスをなくすとともに、細かいシボ加工をして指紋などの汚れを目立ちにくい工夫をしています。 また、操作ボタンは光を乱反射する透明な素材から、ブラック塗装の上にレーザー印字し、光を透過するものに変更しました。 これも検査中の医師や技師から視覚的なノイズを排除することが目的です。

また、本体は軽量・コンパクトにしていますが、安定感はきちんと確保しています。 当初タイヤは70mmだったのですが、より安定させるために73mmに変更。 段差や床を這うケーブルを乗り越える場面でも小さな力で動かすことができ、転倒の心配がないようにしてあります。

山口咲子 山口咲子

総合デザインセンター 専任主任
山口咲子

1992年キヤノン入社。入社以来デザインセンターに在籍し、プロジェクターやプリンターなど多くの製品デザインに携わる。 「医療機器はデザインの更新スパンが長く、いいデザインを長く使ってもらえるので、入社以来ずっとデザインしてみたい領域でした。 Aplio flex & Aplio goは軽量・コンパクトに仕上がったので、検査室だけでなくさまざまな場所で活用していただきたいですね」