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超音波診断情報
US Magazine vol.08

消化管エコーの有用性

モダリティの機能を活かした所見を書いてこそ

ここまで述べてきたとおり、超音波はとても有用なのになぜか軽んじられているところがありますね。これは超音波の良さをフルに活かした診断を返せていないから。実は当院でも私が赴任した当初は、CTが先行していると超音波の所見はそれに迎合したものになっていました。私はそれを厳しく叱りました。たとえCTと違う所見になっても、堂々と根拠を持って超音波の所見を書きなさい、他の検査に迎合する必要はない、と。なぜならCTに迎合するなら、超音波検査を行う意味がないからです。さらにCTと同じ所見だった場合でも、CTにはない付加価値を加えるように常々指導しています。要するに、超音波が軽んじられてきたのは、先行したCTなどの検査結果を反復する程度の内容が多すぎたということなんです。また、消化管疾患の場合、超音波は「ガスが多くて見えませんでした」というのを免罪符にしてきたため、超音波は役に立たないという認識が普及してしまったことにも原因があるのだと思います。

加えて現在の日本の消化管専門医というのはほぼ内視鏡医です。先にも述べたとおり、人が何かを極めようと勉強すれば、その深さに気づくわけです。内視鏡には内視鏡の奥深さがあって、それを追求するのに手一杯になってしまう。さらには人は自分のやっていることが一番素晴らしいと思うようになる。そうでなければ自分の人生に意味が見出せませんから。つまり消化管専門医=内視鏡医である限り、超音波を重用しようという発想はなかなか出ないのです。

私自身は30年来、超音波が消化管に有用だという報告をずっとしているのですが、最初の頃は怒声を浴びせられるために発表しているような感じでした。とてもアカデミックなディスカッションにはならなかったのです。「そんなもので分かるわけない」、「内視鏡で分かるのになんでエコーなんかするのか」…。そういう話ばかりで全く理解はありませんでした。教科書にも超音波で消化管は見えないと書いてあるのですから、信じてもらえないのも仕方ないことでした。それでも現在は攻撃的なことを言う人はほぼいなくなりましたし、少しずつ概念も変わってきています。
ただ、指導的な立場にいる消化管の専門医が超音波というモダリティを認識していないというのが、消化管領域における超音波普及の阻害要因としては大きいのではないかと思います。そういう医師のもとでは消化管疾患の患者さんに対して超音波のオーダーが出ませんから、当然文化も育たないわけです。しかし当院ではまず超音波をとる。消化管の先生方も診療が楽だということで、非常に好評です。こういう文化をいかに育むかということが課題ですね。

また、IBDのモニタリングに関しては製薬会社のプッシュでさまざまな分子標的薬が出てきました。一連のキャンペーンで超音波を消化管の医師に導入してもらえるよう運動を重ねているようですね。

炎症性腸疾患(IBD)にも超音波の特性が有用

IBDの話に触れたので、こちらも簡単に解説しておきましょう。IBDとは潰瘍性大腸炎とクローン病を総称した呼称で、腸を中心とする消化管に炎症が生じる疾患です。
原因がはっきりと分かっておらず、発症すると長期間の治療が必要な慢性疾患です。そもそも炎症というのは紀元前から定義されていて、腫れてきて赤くなり、熱をもって痛みがあったり、最終的にはそれによって機能異常を起こすというものです。炎症は加わった侵襲に対する修復の過程であり、医師が見るのは腫れ具合や血流の増え具合ということになります。ですから現段階で超音波ではBモードによって炎症を起こした壁の腫れ具合を見ます。また、ひどい怪我をすると引き攣れて治ったりしますよね。同様に慢性的に炎症を繰り返すと、組織が線維化します。超音波では、ひどい炎症を起こしたあとの線維化の程度がどのくらいであるか、層構造を見たり、Shear wave Elastography(SWE)によって硬さを見たり、カラードプラで血流を見たりということが行われています。ただ、現行の一般的なカラードプラでは原理上高速域に強く、低速域には弱いため、表示できる血流の速度が限られています。すると、消化管の壁内血流に対しては、炎症性の血流が少し増えたとしてもそれほど速くないので表示されません。

しかし、キヤノンのSuperb Micro-vascular Imaging(SMI)という機能では非常に微細な血流を鮮明に描出することができます。
カラードプラで炎症性の血流が見つかればいいのですが、見つからなかった場合に炎症はないのかというと、そうではない。これをSMIで見ると炎症がけっこう見つかるんです。SMIなら炎症をより正確に把握できるということです

血流は必要なものを運び、不要なものを持ち去る。炎症箇所はそれがあって初めて形態的に変化していきます。ですから炎症性の血流変化を見ることはモニタリングの上で非常に重要です。国外に目を向けても、超音波で炎症を見るときには壁の厚み、層構造、血流といったパラメータが用いられていることが多いのですが、装置の性能によって結果が変わってきてしまいます。その標準化をどうするかというのは課題があるところですが、キヤノンの装置なら、より正確に炎症が判定できるということですね。

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いまだ途上にある消化管エコーの現状

15年前に消化管エコー研究会が立ち上がって、毎年全国数カ所でセミナーを行っています。
毎年多数の聴衆が参加されるので、少なくとも検査技師の間では消化管が超音波で見えることは常識化されています。問題は、実践しているかどうか。必ずしもすべての施設で消化管を超音波で見ているとは限らないということが課題です。技師は医師からオーダーがないと検査できないので、オーダーがないというのが主因です。これには消化管専門医が超音波で消化管疾患がわかるという意識を持たないと変わりません。

とはいえ、消化管が超音波で見えるという認識が常識化しただけで大きな進歩です。
私が消化管の演題を初めて発表したころは、超音波学会に消化管のセッションはなく、「脾臓その他」というところに括られました。それが今は消化管だけで、毎回3〜4のセッションがあり、さらには特別プログラム、シンポジウムも組まれるようになりました。学会で提示される画像も昔はこれでちゃんと診断できるのか、というものが多かったのですが、セミナーの啓蒙もあって信頼に値する画像の提示が増えています。質的にも向上しているということも事実ですね。

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消化管エコー。装置として求めるもの

消化管を超音波で見る難しさの理由は、解剖学的な要因が大きいです。お腹の中はほぼすべてが消化管です。小腸、大腸があり肝臓や胆嚢が上や後ろにへばりつくように押しやられている。つまり、長い管がお腹中を走行しているため、結局どこを見ているかわからない。そういう意味では超音波装置に解剖学的なガイド機能があると、効率的で助かります。

最近では、磁気センサによってプローブの移動距離に応じてボディーマーク上にプローブマークを表示するSmart Body Mark という機能が登場しました。将来的には、自動的に走査してくれるといいなと思いますね。超音波はプローブを当てて、音響窓から広く覗くという作業の繰り返しです。体内のガスに阻害されたらプローブで圧排しなければいけませんから、CTのように寝ている状態でサーッと画像をつくるというのは無理でしょうね。ただ、プローブを当てるアルゴリズムさえ装置に憶えさせれば、自動化ができるのではないかと思います。

画像の描出性能に関していえば、一般的にはなんとなく滑らかできれいだとか、そういう印象で選定される例がけっこう多いのではないかと思いますが、我々は以前からもっと細かく厳しい目で見ています。消化管の壁構造は伸展すると1〜2ミリ程度ですが、超音波で見ると5層に分かれている。これがきちんと見えるかどうかで装置の空間分解能、あるいはコントラスト分解能を判定しています。キヤノンは従来からそういうものが認識できる装置を提供していましたし、たゆまぬ努力によって、技術の進歩とともに、画質の向上を維持し続けていると思います。最近は消化管に対する技師の認識が高まったせいもあり、各社いろいろな工夫をしてきていますが、キヤノンは昔から質の高い画質を提供していたと思います。

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キヤノンの超音波装置との出会い

私が僻地中核病院に勤務していたころに、広島大学に通ってIBDの研究をしていました。この頃に春間先生から消化管運動を超音波で見られないかという話をいただき、当然見えますよ、ということでデモテープをつくったりしました。春間先生は十二指腸胃逆流に昔から興味をお持ちで、これを調べるには放射線同位元素を注射して、出てきた胆汁が胃の中に戻るかどうかという胆道シンチという方法がありました。しかし、超音波を用いれば一瞬で逆流しているのが見えるわけです。逆流を見るならカラードプラの方が分かりやすいだろうということで、キヤノンに協力を頼むとそれは面白いと興味を持ってくれて。それがキヤノンとのつきあいの始まりです。

私が大学を卒業したころは、高周波プローブは小児用でした。しかし現在は成人用、しかも腹部にも普通に高周波プローブを用いるようになっていますし、分解能に加えてペネトレーションもかなり改善されています。また、ティッシュハーモニックイメージングの登場によってサイドローブなどのノイズが軽減されて、非常にクリアな画像になってきました。
過去と現在の画像を比べて格段の進歩があるというのは、これはキヤノンに限った話ではありませんが、それでも同時代の機種を比べた場合、キヤノンの装置は空間分解能、コントラスト分解能で遜色がないというか、他社より優れた画質を提供してきたと私は思っています。

 

求めるのはユーザーフレンドリーな装置

キヤノンが超音波という領域のリーダーシップをとっていると自負しているなら、患者さんにとって役立つものは何かということを常に考え、それに向けた機械をつくる姿勢が重要です。そのためには第一線で患者さんを診る医療従事 者とのコミュニケーションを密にとり、課題を常に認識してもらうことが必要です。権威の先生ばかりに話を聞くのではなく、僻地の先生が本当に欲しがっている機能は何かということを探ることも大切です。
私も研究の延長線上で、こういう機能が欲しいと期待する部分もありますが、それでも私は研究者というより医療者です。目の前の人をどうするかということに尽きるのです。

総論的にいえるのは、装置を使う人皆が超音波に特化しているわけではないということ。また、普及させようと思ったらどんな人が使うかわかりません。逆に言えばどんな人にも使えないといけないのですから、キーワードはユーザーフレンドリーであることです。この言葉をどう解釈してソフトやハードに活かしていくかということが、エンジニア含めての課題ではないでしょうか。誰が使っても同じような画像、目的とする情報が得られること。
また、超音波の特性として空間的、時間的分解能の高さがあるので、それを活かすことがひとつの方向性だと思います。これらを高めた上で、トレードオフであるペネトレーションをいかに克服するか。これは矛盾でもありますがなんとか両立を考えてほしいですね。
あとは弱点である組織分解能の向上です。CTでは白ければ骨とか、抜けていれば空気とか、中間なら水や油という組織分解能がありますが、超音波の白黒は組織に関係なく、境界の強弱、たくさんあるかないかということしか描出されません。ですからその組織の性状を知ることが重要です。組織をより客観的かつ正確に判断する手段を開発してもらえると、超音波の弱点をさらに補うことになると考えます。

企業として期待したいのは、高い品質と耐久性、安全性を持った国産メーカーであるということはキープしながら、さらに日本人のきめ細やかな感性で目的にあった開発なり調整力を発揮してほしいです。また、現在最も装置に触れている技師たちの要望も聞いて、迅速に対応していただけるといいですね。
キヤノンにはユーザーとメーカーという枠を超えて、医療の未来を切り拓く存在であってほしいと思います。

川崎医科大学 検査診断学 教授 畠 二郎
川崎医科大学 検査診断学 教授
畠 二郎 JIRO HATA
  • 自治医科大卒業 
  • 日本消化器病学会認定消化器病専門医
  • 日本超音波医学会超音波指導医(消化器)・専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
  • 日本内科学会認定内科医・指導医

今回、お話をうかがった時に使用した機器について。

Aplio i-series / Prism Edition

Aplio i-series / Prism Edition はキヤノンメディカルシステムズ株式会社のプレミアムハイエンド装置です。ハードウェアを刷新したことで高速信号処理を実現。分解能の向上やFull Focus、SuperWide Viewといった高画質技術を搭載しました。
また、Smart Body Markなどをはじめとした自動化技術により、効率的な検査をサポートします。

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