Vol.5 | 特集
対談 ATIが変える肝疾患の未来
組織内の超音波周波数依存性減衰の程度を計測する「Attenuation Imaging」。
超音波診断のあり方について、熊田卓先生と飯島尋子先生のお二人にお聞きしました。
肝臓の線維化が慢性疾患のゲートウェイ
- 飯島
- 肝臓は線維化を経て機能が低下し、肝癌に至ることが多いことがわかってきたわけですが、そのきっかけとしてC型肝炎の経過に着目したことがありますね。現在、C型肝炎は直接作用型抗ウイルス薬 Direct Acting Antiviral(以下 DAA)でほとんどが治る時代になりましたが、C型肝炎が治っても発癌することがあります。それはどういう症例から発癌するかというと、やはり肝臓が硬く線維化してしまった症例からという傾向があります。
すなわち、肝硬変が進んだ症例は、いくらC型肝炎が治ってもある一定の確率で発癌してくると考えられます。もちろん、さまざまな遺伝子学的な要因などもあると思うのですが、熊田先生はどうお考えですか。
- 熊田
- まさにその通りです。確かに肝硬変の人でもC型肝炎はDAAで治るようになりました。治るというか、ウイルスがいなくなるようになりました。しかしながら、患者さんが安心していると後で癌が出てくる。肝硬変の段階で治療した場合、後で癌化する比率が高いのは、研究者が皆感じていたことだと思います。当時は肝臓の線維化を測る方法は肝生検しかありませんでした。肝生検は侵襲性も高く、肝臓に針を刺して組織を採るということは、出血等の合併症の危険性もある。得られる組織も小さく、サンプリングエラーもあって診断がぶれもありました。そのため病理の先生達の間でも意見が一致しない例も多く、臨床が振り回されていた感じもあります。そういう状況から、侵襲性がない超音波診断装置で肝硬度を測れる手法ができたことは、非常に画期的だったと言えます。
- 飯島
- 線維化を測定する装置といえば、2000年ぐらいにTEが登場して、世界で使われるようになりましたが、私もその頃から使う機会を得ていました。残念ながら、当時は保険の適用もなかったので日本ではそれほど普及していない状況でしたね。ただ、世界に目を移せばTEを使って多くの論文が書かれ、これに刺激される形で多くの超音波メーカーが肝臓の硬さを測る機能を開発し始めたということも事実でしょうね。
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