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Made for Life Special -後編- 「私たちの画像診断装置が島しょ医療に貢献できることは」

人生をともに歩むパートナーとして
地域完結型の医療を目指す。

お話いただいた4名の方

長崎県上五島病院 院長 八坂貴宏

長崎県上五島病院
医療情報部長 整形外科医
一宮邦訓

長崎県上五島病院 放射線科
診療放射線技師長
近藤和久

長崎県上五島病院 放射線科
診療放射線主任技師
安田貴明

画像診断装置の活用の現場から
- 整形外科の事例 -

最期まで歩いていただくための
予防と治療を推進。

一宮医師
現在、整形外科には3名の担当医が勤務しています。意外と、骨粗しょう症が原因で骨折され、入院される患者さんが多いですね。CRは、1日全体で60件ほどのうち、整形外科が半分の30件程度。MRIは、1日全体で10件ほどのうち、整形外科が半分の5件程度の稼働となっています。最近の画像診断装置は、分解能が高く、皮膚と骨を非常に明瞭に同時表示できるため、骨折の箇所と肢位の関係がわかりやすく、手術計画が立てやすくなりました。
人工関節を入れる手術も、画像診断装置を活用することで、より正確な手術が可能になっています。少し前、身が引き締まるとともに、医師冥利に尽きるお言葉をいただきました。人工関節を入れた患者さんがおられたのですが、病気で亡くなられ、葬儀が行われました。その後、ご家族がご自身の診察で来院されたときに、「火葬した時に人工関節が残っていました。すごくきれいなものを入れてくれて本当にありがとうございます。おかげさまで、最期まで歩いて畑に行き、死ぬことができました」と、話されました。整形外科医としては、ただ膝が悪いだけで寝たきりになってほしくありません。高齢化が進んでいるこの島で、できることがまだまだたくさんあると感じた出来事でした。

私は対馬の出身のため、育った環境でも感じていたことですが、やはり島の医療は島内で完結しなければなりません。地域完結型医療を基本として、お亡くなりになるまで向き合う気持ちで医療に取り組んでいます。私は外来を担当することが多いので、特に島の人たちと顔を合わせますから。よく見る例としては、骨粗しょう症などで骨折し、寝たきりになったら肺炎にかかり…という連鎖で調子を悪くされる方々です。そのようなことから一人でも守るために、CTなどの画像診断装置を駆使して、予防と治療に力を注いでいきたいですね。よく院長が、「ここが日本の最前線で、10年後の日本の姿なんだ」とおっしゃられますが、私も未来を切り拓く一員として医療に従事しています。
画像診断装置の活用の現場から
- 放射線技師の事例 -

患者さんにやさしさを
提供できる高性能機器での検査。

近藤技師長
放射線技師は8名体制で、島内の検査を行っています。CTと超音波診断システムによる検査が可能な奈良尾医療センターと有川医療センターには、それぞれ1名ずつを配備。加えて、MRIや心臓カテーテルも可能な上五島病院には、6名が常勤しています。

ローテーション制で24時間365日の検査体制をつくっているため、すべての検査を行えるスキルが必須です。
CT撮影で多いのは頭部でその次に胸部、腹部と続きます。B型ウイルスによる肝炎、肝硬変の患者さんが多数おられました。しかし、前院長の白濱先生が、新生児に対しての予防注射を日本で初めて実施され、それを継続したことが、肝炎撲滅の大きな力となりました。

高性能機器の導入は、前院長の時から積極的に行い、現在の八坂院長がさらに推進させています。5年前に80列CTを導入した時には、ご高齢の方々から撮影の際の息止めがラクになったと喜ばれました。高精細な画像により、高度な医療が可能になることはもちろんですが、患者さんたちにやさしい検査を提供できることも大きな魅力です。検査が大変でこれまで足が遠のいていた人も、これを機に、ぜひ検査に来ていただきたいですね。

私が放射線技師になったきっかけは、前々技師長から、「放射線技師にならないか?」と声をかけていただいたからです。高校生の時に頭痛で当院に受診したときのことです。あの時、頭痛にならなかったら、私はこの道に進んでいなかった可能性が非常に高い。ちょっとしたことで、人生は大きく変わるものだと、あらためて感じています。
検診の受診率を向上させるための試み

島民に長く健康でいてもらうためのお祭
『上五島病院フェスタ』。

安田技師
島民の方々の健康増進と、医師の負担軽減に直結するのが、検診だと思います。その受診率をどう上げていくのかが、医療・行政・地域の共通の課題です。当院では上五島病院フェスタというお祭を催し、その際検診の重要性を啓蒙しています。以前は検診車で域内各地の公民館を訪問して検診を行っていましたが、諸事情でずいぶん前になくなってしまいました。その影響を軽減させるためにも病院フェスタでの検診の啓蒙活動は大変重要な取り組みだと思います。
八坂院長
院長になるより以前から私は上五島病院フェスタのような活動を行いたかったのですが、とにかく人が足りずに開催できずにいました。スタッフのすべてが、業務だけで手いっぱいだったからです。11年前に私が院長なった時に、絶対に遂行すると心に決めましたが、それでも準備に時間がかかり2012年にやっと第一回を開催することができました。当時は職員も大変だったと思います。誰もやったことがない上に、私からの要望もたくさんあったので。でも、最近は私が何かを言うまでもなく、各人が島の現状に問題意識を持って率先して動いています。とてもうれしく、頼もしく思っています。2017年の第6回は、700名ぐらいの人が来場してくれました。人口を考えると4%ぐらいの参加率ですね。今後は、もっとたくさんの人たちに来場していただきたいです。
病院フェスタの開催日はマンモサンデーと同一日にしたことで、良い効果がたくさん生まれました。乳がん検診に関して「ずっと受けたかったけど、育児で忙しくてできなかった」「仕事で受けられなかった」という声をたくさん聞きました。そもそものきっかけは、日本乳がんピンクリボン運動(認定NPO法人J.POSH)が、全国の医療機関や自治体に 「10月第3日曜日に全国どこでもマンモグラフィー検査が受診できる環境作り」と呼びかけたこと。現在では、年に1回では足りないと感じ、9月の第3日曜日にも、マンモサンデーを開催しています。

島における検診の受診率は、40%と国や県の平均値よりもはるかに高いのですが、未来のことを考えるとまだまだ少ない数値です。理想はその倍の80%。これを実現するためには、私たち医療従事者の人手不足も解消しなければなりません。与えられた課題は大きいですが、私たちは立ち止まらずに取り組み続けます。島と日本の未来のために。
未来へのメッセージ

これからの島しょ医療とは。
これからの日本の医療とは。

八坂院長
これまでも話したように、人手不足が島の医療における最大の問題点ですが、それ以前に島全体の過疎化という課題が大きく横たわっています。人口がどんどん減って若者がいなくなると、それこそ島が成り立たなくなる。町が成り立たないということは、病院も成り立たないということ。そのような時代の到来が、非常に怖いです。人が住みたいと思い、島に残りたいと思える環境を早急につくらなければなりません。毎年春、フェリー乗り場で、島を出る人を見送る姿を数多く目にします。なんと、高校を卒業した人の5%しか島に残りません。4月や5月というのは、島内の人口が大きく減って寂しい季節になります。この町に活気を呼び戻すとともに、私たちは医療を軸として住民の生活や人生を支えられる存在になることが、次の目標になっています。

2019年の初めに、当院はミャンマーから介護技能実習生を受け入れます。これまでは国の規模で、海外から看護師を受け入れる試みが進められてきましたが、どうしても言葉の壁があり、国家試験に受かる人が少なかった。しかし、介護士に関しては、国の法律が変わり、実習生の受け入れが可能になりました。私自身も医療支援でミャンマーへ行き、現地の方と関わりを深めています。ミャンマーの人々は、仏教徒で親日的であり、島内での介護を支える人材として活躍してくれると信じています。現在、面接まで済ませ、3名に内示を出したところです。

私自身が医療に携わる中でうれしいのは、退院する時に「ありがとう」と言われること。医者としての最高のご褒美だと考えています。最終的には、自らが治療に関わらせていただいた方、つまりはともに人生を歩んで一緒に生活してきた人の大往生に接すると、医療に携わっていて良かったとつくづく感じます。当然、最期は悲しいものです。しかし、自宅で亡くなった方は非常に良いお顔をされていて、人間の最期という荘厳さに圧倒されてしまいます。

医療とは、人を診るもの。そして、その人が送る人生と常に一体であることが根本です。キヤノンメディカルシステムズさんの画像診断装置は、単に医療というサービスを支える機器としてだけではなく、たくさんの方々の人生とともに歩むパートナーとして、上五島の医療とくらしに貢献してくれると信じています。

キヤノンメディカルシステムズは、
これからも日本全国の医療機関と連携し
Made for Lifeの理念を推進していきます。

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