あなたの街のMade for Life
Vol.5
#イギリス
UNITED KINGDOM
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医療とスポーツの融合で
健康格差を解消
ウェルビーイングを支え、
医療課題に貢献する
●ウェルビーイング(Well-being)
個人、コミュニティ、国家として、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること。
また、それが将来的に持続可能であること。イギリスではウェルビーイングを数値化し、国の政策運営に活用している。
イギリスはNHSという公的医療保険制度によって、国民が平等に医療サービスを受けることができますが、一方でさまざまな課題も抱えています。ライフスタイルの変化や寿命の延伸に伴い増加する患者数に対して、医療リソースが不足。また日本と同じくイギリスの経済成長は鈍化しており、増大する医療費をいかに抑えるかという問題にも直面しています。その対策として病気の早期発見はもちろん、健康な状態を維持することはウェルビーイングの観点からも重要です。私たちは製品を通じてこれらの課題に多くの貢献をしていますが、さらに一歩進んだ取り組みとして、シェフィールド市へのアリーナ建設の産官プロジェクトに参画し、Canon Medical Arena(キヤノンメディカルアリーナ)と名付けることとなりました。
当アリーナは、民間の医療機関とスポーツ施設を統合した非常にユニークなスポットです。3面のバスケットボールコートでは我々がスポンサーを務めるプロバスケットボールチーム「シェフィールド シャークス(男子)」「シェフィールド ハッターズ(女子)」の試合や練習が行われ、さまざまなスポーツイベントを開催。2階のスタジオではヨガなどのプログラムが実施され、地元の人々が参加しています。
アリーナ設立の目的の一つは、シェフィールドの健康格差の是正です。イギリストップクラスの優秀な大学であるシェフィールド大学があり、地域のおよそ20%の人々は高い水準の教育と収入を得ていますが、一方で地場産業である鉄鋼業の衰退と共に貧困問題が発生。健康寿命を比較すると、最も裕福な人と最も貧しい人で、最大25年もの差があるのです。貧困層の病気の原因として、「肥満」「運動不足」が大きく影響しています。医療機関だけでなくスポーツ施設へのアクセスを容易にすることで、そのギャップを埋めることができるのではと考えました。
さらにアリーナでは、地元の子どもたちに対して、RESPECTプログラムを提供しています。これはシャークス、ハッターズという人気プロバスケットボールチームの選手との楽しいセッションと、ワークショップを組み合わせたものです。建設的なエネルギーの発散、コミュニティの構築、いじめや健康についての学びによって、犯罪に手を染める若者を減らし、スポーツで社会変革を促進します。男女両方の選手たちがよいロールモデルとなることで、ジェンダー平等を促す狙いもあります。このプログラムは非常に大きな効果を生み、これまでに約5,000人の子どもたちが参加しました。
アリーナにおける医療サービスの面では、キヤノンの高性能なMRIやCT、X線装置、エコーを導入し、質の高い検査と治療を行っています。政府が力を入れている前立腺がんの診断センターとしても機能し、病気の早期発見・早期治療に貢献しています。また、スポーツ医療においても重要なポジションを担っており、シャークス、ハッターズの選手はもちろん、サッカー、ゴルフなど、多くのプロスポーツ選手たちが検査や治療を受けに訪れます。現在では画像診断技術を駆使することで、選手たちの将来のけがを予測できる可能性が見えてきました。さらに複数の大学と連携し、プロスポーツの知見を一般の人々に展開するための研究も進んでいます。
私たちが行うすべてのことは、健康寿命を延ばし、生活を改善し、命を救うことを目的としており、それがお客様との長期にわたる絆をつなぐ礎になっています。製品はもちろん、さまざまな取り組みを通じてこれからもMade for Lifeを体現していきたいです。
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キヤノンメディカルアリーナのコミュニティリンクで
開催された、RESPECTプログラムのワンシーン。
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プロバスケットボールチームであるシェフィールド シャークスとシェフィールド ハッターズの公式新本拠地でもあるシェフィールド。
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シェフィールドオリンピックレガシーパーク内に立つ、多目的スポーツ施設と医療診断センターを備えたキヤノンメディカルアリーナ。ウェルビーイングとスポーツの融合を目指し、2023年に建設された。
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プライベートでは日常的に散歩を楽しんでいるというMark。休日には住まいの近くであるコッツウォルズを訪れ、妻と一緒にパブでランチをするのがお気に入り。
取材日:2024年11月15日(オンラインインタビュー)
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Canon Medical Systems Ltd.
Managing Director
Mark Hitchman
NHS TrustのCTスキャン部門を率いる放射線技師として医療の現場で研鑽を積み、またヘルステック企業でマネージャー職を歴任した経歴も持つ。キヤノンメディカルシステムズの英国法人に入社後は、ハイエンドCTの普及のためヨーロッパ各地を回り、現在までマネージングディレクターとして活躍。
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キヤノンメディカルアリーナのバスケットコートにて撮影