福島の人たちの温かさに報いたい。
「有法子（ゆうふぁーず）」を信念に
医療インフラを支える

私たちカスタマーエンジニアは、装置の据付から保守、修理、そしてその役目を終えるまで、長ければ十数年、装置と伴走する仕事です。福島サービスセンタには12名のカスタマーエンジニアが在籍し、日々お客様をサポートしています。

マネジメント職に就く前は、もともとX線装置や血管撮影装置のサポートを担当していました。X線装置は装置の種類が多く、覚えることは山ほどあります。また機械についての知識はもちろん、臨床でどのように使われているのかも理解する必要があり、解剖学など医学的な勉強もしました。私自身は、10年目くらいでようやく一人前になれたかな、と思っています。カスタマーエンジニア職は長く装置に関わるため、お客さまとの関係構築が欠かせません。本来得意な方ではありませんが（笑）、物おじせずコミュニケーションをとることを意識しています。例えば血管撮影装置は手技に直結する装置であり、求められる画像は医師によってそれぞれ異なります。ご希望通りの状態にするのは容易ではありませんが、丁寧なヒアリングを心掛け、ご満足いただけたときには大きなやりがいを感じます。

入社してから約30年、そのうちの約半分は福島勤務です。東日本大震災では、ちょうど福島市内の病院で点検を行っている最中に被災しました。点検を中断し、市内のほかの病院を巡って被害状況を確認していきました。翌日からチームを総動員し、災害拠点病院や急性期病院など、緊急度の高いところから優先順位を付けて訪問しました。福島県は日本で3番目に面積が広いうえ、病院も全域に点在しているという特徴があり、移動には時間がかかります。最終的に確認が終わったのは約2週間後でしたね。どの病院も建物の倒壊は免れましたが、装置が倒れていたり、壁にひびがはいっていたりと、地震の爪痕は随所に残っていました。そんな状況にあっても、私たちが伺うと、病院の皆さんから「大丈夫？」と言葉をかけていただいたのが強く印象に残っています。ご自身も被災されている大変な状況でも、相手を気遣ってくださる温かさに励まされました。

アメリカ同時多発テロ被害者の遺族団体『9.11家族会』から、東日本大震災の復興を願って寄贈された『復興の折り鶴』。開成山公園に設置されたこのモニュメントには、テロで崩壊したニューヨークの世界貿易センタービルの鉄骨が使われている。

震災の翌日からは、原発事故の影響もありました。仕事柄被ばくについての知識があるため、やみくもに怯えるようなことはありませんでしたが、立ち入り禁止区域が段々と広がるなか、この先どうなるんだろうという不安は皆感じていましたね。そんなときでも、いえ、だからこそ、装置をいち早く復旧し、通常通りに患者さんの検査ができるようにしたいという想いで仕事をしていました。

私が好きな言葉は「有法子（ゆうふぁーず）」。中国語で「諦めるのはまだ早い。方法はある」という意味で、新幹線の父と呼ばれる国鉄総裁・十河信二の座右の銘です。どんな困難に対峙しても、何か方法があると信じて挑み続けることが大切です。私たちが諦めてしまえば、装置が止まり、患者さんの検査や治療が止まってしまいます。命と健康に関わる装置を扱う以上、それは最大限避けなくてはいけません。装置の安定稼働を通じ、医師・技師の皆さんが働きやすい環境をつくり、患者さんの命を守る医療につなげる。それが私たちカスタマーエンジニアの『Made for Life』だと信じています。

福島は日本でも特に医師不足が深刻な地域です。どの施設でも患者さんに十分な医療を届けるための努力をされていますが、ご苦労も多いと感じます。そんな中で私たちができることは、より使いやすく、より診断しやすい装置を安定してご提供することです。全国各地に拠点を持ち、いつでも駆け付けられるというキヤノンの強みを活かし、これからも地域医療に貢献していきます。